感想:『日本の著作権はなぜもっと厳しくなるのか』

この本は、山田奨治教授が日本の著作権法改正の舞台裏をていねいに描いたもので、2011年出版の『日本の著作権はなぜこんなに厳しいのか』の続編。 一般に、弁護士や法学部生・ロースクール生は、職業柄どうしても 「現行法がどう解釈されるのか?」 という法…

紹介:『福田 博 オーラルヒストリー「一票の格差」違憲判断の真意』

10年に及ぶ最高裁判事の在任中、議員定数不均衡訴訟において、常に違憲判断を貫いた福田元判事。この本は、その福田元判事のオーラル・ヒストリーです。 外交官ご出身の福田元判事、前半では、幼少期から外交官時代、そして最高裁判事になるまでが綴られて…

シリコンバレーの法務記事紹介 - Apple 本社の企業内弁護士

Apple Watch も発売され、その時価総額が4月24日時点で実に7588億ドル(日本円で90兆円超)という天文学的な数字に達した Apple Inc. そんな Apple 本社の法務部の記事をみつけたので、ここにご紹介。その題名も、米国的に直球ズバリの How to Get a Job at …

感想:『外資系トップの英語力』

英語との付き合い方や今後の自らの英語でのコミュニケーションを考える上で、多少なりともヒントになればと思って読んでみたが、この本は、一見ありがちな売らんかなの書名に反し、予想以上に興味深い話が多かった。 外資系企業の日本法人のトップから、自ら…

米国テクノロジー企業のインハウス弁護士採用・育成事情

米国企業法務の業界誌である Corporate Counsel に、テクノロジー企業のインハウス弁護士の採用事情を取り上げた記事があった。標題からして華々しい社名が登場し、現職インハウス弁護士へのインタビューを元に構成され、内容もとても興味深い。 How IBM, Go…

英語の冠詞と名詞の単複

ノン・ネイティブには、英語の冠詞や名詞の単複はなかなか難しい。会話であれメールであれ、頻繁に迷うし、気付かずに誤った用法で誤解を招く言い方をしているだろうと思う。一説によると、日本人の英語の書き言葉の文法ミスでは、第1位が the であり、第3位…

米国のスタートアップと社内弁護士

TechCrunch に Why Startups Hire Their Own Lawyers という記事があった。 Why Startups Hire Their Own Lawyers | TechCrunch ここでの their own laywers というのは企業内弁護士のこと。Foursquare や Zendesk、Kickstarter といった著名スタートアップ…

感想:『競争戦略としてのグローバルルール - 世界市場で勝つ企業の秘訣』

この本の著者の藤井敏彦氏は、通産省入省後、ヨーロッパで日系ビジネス協議会事務局長としてロビイングに従事、また、WTO等で交渉官を務め、多くの国際的なルールづくりに日本側代表として関与された方。 藤井氏は、この本で、ルールを巡る国際交渉での力学…

プロバイダ責任制限法とCDA/DMCAにみる日米デジタル法制の違いとScalability

日本にはプロバイダ責任制限法という法律があり、インターネット上のユーザーの権利侵害行為とインターネット・サービス・プロバイダーの責任の関係について、一定のルールを定めている。ざっくり実務的に言うと、「責任制限法」の名をとりつつも、著作権侵…

英文作成の技法・文献紹介:The Science of Scientific Writing

英文作成の技法を説明した The Science of Scientific Writingという記事を見つけたので、備忘のためにメモ。著者の一人 George D. Gopen は、Duke Universityの英文学の Associate Professor である一方、同大学の文章作成プログラムの運営責任者を務めるが…

弁護士の英語 - 法的な検討編

dtkさんの英語の電子メールで使えそうな表現のメモ : dtk's blog (ver.3) を読みました。私も弁護士登録以来、ずっとそのようにして英文メールのストックを増やそうとしてきました。これは、程度の差はあれ、日本の会社の新卒が職場の先輩の日本語の業務文書…

感想:小田滋『国際法の現場から』

海洋法の世界的な権威であり、3期27年という長期にわたって国際司法裁判所の判事を務めた小田滋氏。この本は、小田氏がその生涯を率直に綴る自伝。日本人の法律家で、これほどまでダイナミックかつ世界的に活躍した例があったとは、恥ずかしながら全く知らず…

日本法と日本語の法律実務

半年ほど前に、タイムラインで、法学と翻訳と他言語(主に英語)について話が盛り上がっていた。その際に感じたことを少し整理し、備忘のために残しておきたい。そうして振り返ってみたところ、長期的な視点にたつと、日本語を母語とする者として、日本法と…

感想:吉村昭『ポーツマスの旗』と契約交渉

数多くの作品を読んでいる訳ではないが、好きな作家の一人に吉村昭がいる。この作品は、ときの外相小村寿太郎が全権大使として臨んだ、日露戦争のポーツマス講和会議を取り上げている。 当時、日本は日本海海戦で歴史上でも稀にみる完全勝利を手に入れ、国民…

法律事務所の弁護士とインハウス・カウンセル

日本でも昨今、企業内弁護士が増えつつある。日本企業の法務部に就職する新人弁護士や、法律事務所で数年実務を積んだ後に留学後のタイミングで外資系企業や総合商社のインハウスに転じる弁護士も珍しくない。 今日、ご紹介したいのは、Santa Clara Universi…

専門スキルとその他のスキル

クーリエ・ジャポン 11月号に、ヤフーの安宅さんによる「これからのビッグデータ時代に必要とされる人材の条件とは」との記事があった。 記事後半で「専門スキルに依存しない」と題するお話があって、印象に残ったので少しご紹介。 私は、スキルは「基礎スキ…

自分自身のリストラクチャリング

週末、心にグサリと突き刺さった一言。広瀬隆雄氏のMarket Hackより。 昔のギョーカイの人々のゴシップを聞くにつけ感じることは、自分を何度もre-inventingすることの重要さです。なぜなら産業や企業の浮沈より、自分の生涯の方が期間が長いからです。 これ…

IT法務:シリコンバレーのプロダクト・カウンセル

「IT法務」という言葉に接した。これは結構多義的な言葉のようで、例えば、デジタルやオンラインのサービスと著作権の問題だったり、プロバイダ責任制限法関連の領域だったり、あるいは、システム開発契約の交渉や契約後の紛争を指していることが多い。その…

法学生向け お薦め本リスト

少し前に法学部生、法科大学院生、司法修習生向けに、この夏のお薦め本を連続でツイートしたので、それを簡単にまとめました。 1. 山本祐司氏『最高裁物語』 著者は、毎日新聞で長く司法記者をされ、日本の司法と最高裁判所を観察し続けてきた山本氏。戦後の…

専門職としての落ち着き

最近、週刊モーニングに連載されている「コウノトリ」という漫画を毎週心待ちにしているのだけど、今週、印象的なフレーズがあった。 主人公は産科医、場面は彼が若き研修医だった頃の回想シーン。深夜、他に正規の産科医がいない中、突発的に被膜児のお産が…

グーグル型コンプライアンス?

元のNBLの座談会記事をみていないので、本当は何とも言えないのだけど、山口利昭弁護士のblog記事「グーグル型コンプライアンス経営は日本企業に根付くのか?」をみて、正確にはその標題の「グーグル型コンプライアンス経営」をみて、ふと感じたことが一つ。…

感想『インテル戦略転換』

インテルのCEOだったアンドリュー・グローブの『インテル戦略転換』。原題は "Only the Paranoid Survive"「パラノイアだけが生き残る」。この原題からして至言だと思うけど、これに限らず他にも頷いてしまう言葉が山ほど。 以前、何かの折に読みたいと思い…

blog 始めました〜

今さら感満載ですが、、、Twitterの140文字で書ききれないことをサラっと残すため、blog 始めました。 弁護士ブログで主流の本格的に何か調べて書くという方向ではなく、自分のための軽めの備忘録といった感じです。例えば、本や論文、ニュースを読んだとき…