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感想『インテル戦略転換』

インテルのCEOだったアンドリュー・グローブの『インテル戦略転換』。原題は "Only the Paranoid Survive"「パラノイアだけが生き残る」。この原題からして至言だと思うけど、これに限らず他にも頷いてしまう言葉が山ほど。

以前、何かの折に読みたいと思いつつ、当時は残念ながら絶版。ただ今回は中古本を入手できた。日本語訳の出版は1997年10月だが、15年以上前とは思えない目新しさ。特に、インテルの根幹だったメモリー事業からの撤退は、痛みを伴う事業構造の転換として、まさに現在の日本が国単位で体験している状況に似ているかもしれない…

また、この本は、企業だけでなく、個人のキャリアに当てはめて考えてみても、とても得るものが多い印象。

「産業全体を変え、企業をも呑み込んでしまうような地殻大変動が起きたら、あなたの職がどうなってしまうか、いったい誰にわかるというのだろう。だいたい、職の保証など誰にもできない。はっきりいって、他人のことを心配する人などいないのだ。ごく最近まで、大企業に就職すれば退職するまで職は保証されたも同然だと考えられていた。しかし、企業の寿命ですらそれほど長くないこの時代に、どうして終身雇用を保障できるというのだろう……終身雇用制の下、さまざまな年齢層の社員を抱えてきた企業が、今や一万人もの社員を路頭に放り出しているのである。悲しいことに、他人があなたのキャリアの責任を取ってくれるわけではない。」

とあって、アメリカでさえ、1980年代まで多少なりとも大企業の終身雇用が期待されていたことが伺われる。そういう意味では、一般的な日本人にとっては今のタイミングでこそ、ちょうど良さそう。そもそも、この言葉、著者名を隠して示されたら、今の日本に向けた提言と感じる人が多数ではなかろうか。また、

この幹部たちは、従来の枠組みの中で製品を開発し、競争することに卓越していたからこそ、昇進できたのである。長きにわたって縦割り型コンピュータ産業で成功してきた思考や直観がすっかり身体にしみついていたのだ。そのため、産業そのものが変化しても、製品開発や競争に関して、過去に成功を導いた方法をそのまま用いて競争を制しようとした

とか、

過去にはなばなしい活躍をした人物ほど最後まで変化に適応しようとせず、戦略転換点の論理にも屈しないため、他の誰よりも困難な状況に陥りやすい

といった、時代や地域の違いを超えて激動期に一般的に通用する、しみじみと頷ける話が多い。

最後に、戦略転換点を乗り越えて今や世界屈指の巨大企業となったインテルも、全世界でPCからタブレットやスマートフォンへ移行が進む中、米インテルの第1四半期は減収減益、第2四半期は最大8%減収の見通しというように苦境が報じられている。再度の戦略転換を果たすことができるだろうか?

まあ、本の感想としては、インテルの心配をするより、10年後の自分のキャリアをパラノイア的に心配すべきではあるけれど…

追伸 中大理工学部の竹内健教授がこの本を何度も読み返したと仰っている。幅広くファンがいそうな本。