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法学生向け お薦め本リスト

少し前に法学部生、法科大学院生、司法修習生向けに、この夏のお薦め本を連続でツイートしたので、それを簡単にまとめました。

1. 山本祐司氏『最高裁物語』

著者は、毎日新聞で長く司法記者をされ、日本の司法と最高裁判所を観察し続けてきた山本氏。戦後の最高裁判所の辿った激動の歴史を描いた力作。判例や憲法の基本書の学習で触れられる事の少ない、最高裁判所そのものに焦点をあてた希有な書籍で、2010年代に入った今となっては若干古いかもしれませんが、それでも、司法という世界に多少の興味のある方にとって一読の価値あり。

2. 濱口桂一郎氏『日本の雇用と労働法』

ブログでも精力的に情報発信をされている濱口氏。行政官のご出身だからか、一般の労働法の基本書がそれほど深入りしない、歴史的経緯に焦点をあてて、日本の労働契約の特色を説明。実務家は、日本の労働法を外国人に説明する際、解雇に制約がある一方、社内での人事権行使には広範な裁量があると言うことが多いのではないか。その辺りを、日本の労働契約は「ジョブ型」ではなく「メンバーシップ型」であるとして、深く理路整然と説明。労働法という個人の意見の相違のとても激しい分野だけに、もちろん、濱口氏の提案する方向性に賛成できる人ばかりではないだろうが、それでも一読の価値あり。

3. 野口祐子弁護士『デジタル時代の著作権』

著作権に興味のある学生さん、インターネットに興味のある法学生さん、いずれも必読。類書はなかなか見当たらず、それも、著者のご経歴、シリコンバレーでこの分野の議論が大きく進展した時期にレッシグを指導教授としてスタンフォードに4年もいらっしゃったという点を考えれば納得。

一方、素晴らしい本であるものの、実務家向けでもあって、コンパクトな割には内容はかなり高度。また、これだけの本を短期間で書かれたという話もあり、実務家からすると、真摯にこの分野を探求する著者の姿勢や力量を目の当たりにして、彼我の差にショックを受ける面もありそう…

4. 桝田淳二弁護士『国際弁護士 』

よく世間で「国際弁護士」という言葉が使われるたびに、弁護士の間では必ず「実際は、そんな職業はない」という反応があり、私も同感。日本の大手事務所は、主として、日本法を基礎にして外資系企業を日本国内で代理・助言したり、日本国内の取引ではあるが外資系企業がからむために英文契約となったものに従事(昨今は、それに加えて日本企業のアジア進出のサポートも)。それは、必ずしも「国際」という語感ほどの広さをもった活動ではないような。ただ、この本を読むと、日本企業がメインの依頼者にせよ、桝田弁護士の米国での活動のダイナミックさは、まさに「国際弁護士」といってよいレベル。

5. 中嶋博行弁護士『第一級殺人弁護』

現役弁護士が書いた推理小説として、妙にリアルな『第一級殺人弁護』あたりも、司法修習生法科大学院生に人気を博しそう。10数年前の自分の司法試験明けの夏休み、確か、同じ著者の『違法弁護』を読んでとても面白く感じた記憶あり。

この本は、確か2000年代前半。『違法弁護』を初めとする三部作はさらにその前、90年代。その後、刑事司法は裁判員制度の導入という大変革があり、さらに事実は小説より奇なりを地でいく事件が多発。とはいえ、この本の面白さは変わらないと思うので、今後、中島弁護士が2010年代のリアルな推理小説を執筆することを切に願いつつ、ここにご紹介。

6. 小林正啓弁護士『こんな日弁連に誰がした?』

最後は、今までとだいぶ毛色が変わって、弁護士の総本山、日弁連を取り上げた希有な書籍。残念ながら、この本を紹介したツイートのみ何故かRTもFavも全くつかず…そして、この本を紹介するちきりんさんのBlogなどをみても、法科大学院生のモチベーションをむしろ下げかねないが、多少はこういう側面もあるので、自分が関心をもつ世界について、きちんと現実を知ることは大切。。。さらに、東京ならば弁護士していて、日弁連弁護士会と接点を持たなくても、特に支障は生じないので、この本を読んで悩んでしまったとしても、さほど考え込まないことも肝要。