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感想:『外資系トップの英語力』

英語との付き合い方や今後の自らの英語でのコミュニケーションを考える上で、多少なりともヒントになればと思って読んでみたが、この本は、一見ありがちな売らんかなの書名に反し、予想以上に興味深い話が多かった。

外資系企業の日本法人のトップから、自らのキャリアで英語を使うことにより広がった世界や、仕事の進め方や考え方の変化、語学勉強法などを聞き出す、というコンセプト。以下、各氏のインタビューで心に残った部分をメモ。

  • 井上ゆかり氏(日本クラフトフーズ代表取締役)- 新卒で入社したP&Gでは、やがて昇進して米国本社で勤務することとなったが、その当時、上司から指摘を受けて、英語発音矯正のため、アクセント・トレーニングを受けさせてもらったそう。また、リーダーシップ・スキル改善のために、上司の奨めで専門のコーチを付けてもらい、会議の仕切り方などを社内で観察したコーチが同僚から聴き取りした上で井上氏にフィードバックを提供し、それを元に改善を図ったとのこと。
  • 梅田一郎氏(ファイザー株式会社代表取締役)- 「勉強の極意。 それは好きなものをあきらめて集中すること」という。梅田氏は、楽しみとしての読み物はもう何十年もしていないそう。また、英語の勉強の仕方として、シャドーイングとディクテーションを挙げる。なお、日本法人の社長就任時には、前任者から「英語を勉強しておいてくれ」「どんなに素晴らしい考えを持って、その国の人から尊敬されていても、英語ができない人間としゃべったとき、こいつは本当に大丈夫なのか、と思ってしまうから」と言われたと語る。
  • 織田秀明氏(ボッシュ株式会社取締役社長)- 英語の上達には、積極的に人と話し合いをして、コミュニケーションを学ぶことが必要と指摘。「英語だけ学んだってしょうがないんですよ…もっと言えば、言葉なんてうまくなる必要はなくて、コミュニケーションこそ、できないといけないんです。それこそ、誤解を生み出すかもしれないと思ったなら、できるだけしゃべらないほうがいいんです。言葉は少なくする。その分、ハートを使う。一生懸命、説明しようとすれば、心は伝わるんです」
  • 織畠潤一氏(シーメンス・ジャパン株式会社代表取締役社長兼CEO)- 「コミュニケーションというのは、一度伝えたから、すぐに通じるものではないんです。どの国のどんな組織のリーダーたちも、みんな手を替え品を替え、必死で取り組んでいるんです」「グローバルだからこそ、日本のことをちゃんと知っておく必要がある…日本人が英語でしゃべるからこそ、日本のことを理解しておかないといけない」
  • 小出伸一氏(日本ヒューレット・パッカード株式会社代表取締役) - 「グローバルな会社にいると世界が良くわかる。日本は極めて厳しい見方をされています」小出氏によれば、海外からみた日本はマイナス成長、他に例のないデフレの国で市場は大きくならず、製造コストも不動産コストも人件費も高く、それでいて品質に対する要求が高いからテストを重ねてお金がかかる、加えて高い法人税も取られる、そうすると、そのような国に投資してよいか、と全世界が思っている。英語ができれば、日本人もそれを肌で感じることができるようになる、それは日本に間違いなくプラスになるという。
  • 小出寛子氏(パルファン・クリスチャン・ディオール・ジャポン株式会社代表取締役社長)- 外国人の中での会議で議論に割り込むため、発言の際には開き直って手を挙げるとか、事前に会議をファシリテートしている人や最もポジションの高い人のそばに座ったりなど、発言の機会を確保するために工夫することも多かったとのこと。また、「英語国民はストレート、嫌なものはノーと言う、というイメージは間違っています」と指摘。ちゃんと気を遣い、相手の状況を理解した上で発言することが大切という。日本語でのコミュニケーションと同じで、引くところは引きながら、建設的にwin-winの関係を作り上げることを意識する必要があると強調。なお、(井上氏と同様、)社内で会議の主宰やプレゼンテーション、リーダーシップのために充実したトレーニングを受けたという。
  • 須原清貴氏(フェデックスキンコース・ジャパン株式会社代表取締役)「グローバルに生きるためのチケットが英語です。しかし、グローバルで生きるためには、むしろ日本を知ることが大切になると僕は思っています」
  • 外池徹氏(アメリカンファミリー生命保険会社代表者)- 英語にも仕事の場にふさわしい丁寧な言葉づかいや状況に合わせた言葉の変化があるので、ネイティブに近づこうとするのではなく、まずは、教科書にあるような、きちんとした普通の英語を話すことが大切と指摘。 そして、日本人は日本に関する理解と知識が必須だとした上で、グローバルコミュニケーションで大切なのは色々な価値を理解する柔軟性であり、先入観にとらわれないことだという。
  • 鳥居正男氏(ベーリンガーインゲルハイムジャパン株式会社代表取締役)- 英語にも礼儀作法があり、反対意見を言うときにはまず相手の発言に配慮する必要があると指摘。「メールを見ても、外国の人たちはとても配慮します。強い反対意見であった場合でも、とてもマイルドに書いてくる。前後をやさしく包んでいる。そういう配慮が必要」という。また、英語はツールであって、重要なことは何を話すかであり、日本人として日本の教養をしっかり理解しておくことが大切と強調。
  • 程近智氏(アクセンチュア株式会社代表取締役)- 英語力だけではない、付随するコミュニケーション力が必要として、一例として根回しを挙げる。「外資系でも根回しはちゃんとあるんですよ。事前に報告しておいたほうがいいことは、あるに決まって いるわけです。また、会議の後にはしっかりフォローする。メールなり、電話なり、レターでもいい。フォローされれば、受け手は安心します」アジアの人間なら、英語力とそれに付随するコミュニケーション力がとても大事であり、とにかく英語がうまくしゃべれればいい、ではないと強調。